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Q&A
1:国際会計基準の動向
Q1:最近の国際会計基準の世界の動向を教えてください。

国際会計の最新動向について
米国の対応 : コンバージェンスからアドプションへ 》

(会計基準の統一化 (コンバージェンス)から国際財務報告基準(IFRS)のアドプション(採用)

橋本 尚 (青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科教授)の講演の要旨
             (2008年11月20日RIETI シンポジュウムより引用)

国際会計の最新動向について

米国の対応 : コンバージェンスからアドプションへ

  2008年は、コンバージェンスからアドプション(自国の基準を捨てて国際ルールを採用する)方向へと国際会計の潮流が大きく変化した年といえる。 
 2007年8月、米国のSECは、米国企業に対してもIFRSに基づき作成した財務諸表を認めるべきか否かに関するコンセプト・リリースを公表している。
 2009年には、この動向が急展開し、SEC規則案「米国企業のIFRSに準拠して作成された財務諸表の採用へ向けてのロードマップ」が公表されている。

 その背景には、IFRSの市場シェアが35%に達し、今後ますます増大傾向にあるのに対して、米国会計基準の市場シェアは28%にすぎないこと、さらに、米国の投資家の3分の2は外国企業の株式を保有しており、米国企業にIFRS採用を認めることが、投資家保護や財務諸表の比較可能性の向上につながるといった考えがあることである。
 そこで、特定の米国上場企業に対して2009年12月15日以後終了する事業年度からIFRSの採用を試験的に認める提案がなされたという経緯がある。その結果をみたうえで、米国の全上場企業にIFRSの採用を義務付けるか否かの決定が2011年に行われる予定となっている。
 IFRSの採用義務付けが決定された場合は、大規模早期適用企業(時価総額7億ドル以上)は2014年12月15日以後終了する事業年度から、早期適用企業 (同7500万ドル以上)は2015年12月15日以後終了する事業年度から、その他の企業は2016年12月15日以後終了する事業年度からIFRSを義務付ける案がロードマップ案として示されている。
 ここで見られるように、米国は、米国会計基準とIFRSの併存が会計基準の国際的統一化の障害となるのであれば、米国基準を捨て、世界の大多数の国が採用するIFRSを採用するとのスタンスで検討を進めている。

 日本の対応 : コンバージェンスからアドプションへ
 一方、日本が2007年に締結した「東京合意」は、日本の会計基準を堅持しつつ、IFRSとの主要な差異を解消することを目指すものです。
 しかし、米国が単一の国際会計基準実現に向けコンバージェンスからアドプションへと方向転換した今、日本もIFRSをアドプションするのか否か、その進むべき道が問われている。

 こうした状況の変化を踏まえ、日本経済団体連合会は2008年10月14日に「会計基準の国際的統一化へのわが国の対応」と題する意見書(注1)公表し、日本もアドプションに向けたロードマップを描くべきとの提言をしている。IFRSへの日本の対応については、企業会計審議会の企画調整部会も意見書をまとめる予定になっている。

 日本の課題
 まずは、アドプションに向けて、日本ルールと国際ルールの差異解消に向けた努力を引き続き積極的に行うことが重要である。
 日本特有の課題としては、企業会計と税務会計(法人税法)の関係を改めて整理する必要がある。また、連結のみIFRSを導入するとして、いつ、どのように採用するのかを考えなければならない。その上で、連単の整合性は維持すべきである。 
  IFRSの最新版(日本語版)を早急に作成し、国際ルールの教育を普及させることも課題である。会計基準の適用面でのコンバージェンスの達成に向けては、監査の問題、倫理の問題、教育の問題など多くの課題を解決する必要がある。
 さらには、国際的会計ルール作りにおいては、実際にルールが作られるIASBでの日本の発言力を高める必要があるので、現在の日本代表の任期が切れる2011年以降を見据えた後任の人選や育成も大きな課題となる。XBRL(注2)などの電子開示の機能充実との一体的取り組みも必要であろう。

 XBRLの無限の可能性
 XBRL(オープンスタンダードな会計標準言語による電子開示)は、今後、国際ルールが普及するにあたり大きなカギとなるであろう。日本でも2008年度からXBRL化による電子開示システムEDINETの機能充実が図られている。また、SECは、2008年8月に、従来の電子開示システムEDGARから新しくIDEA(Interactive Data Electric Applications)へ移行することを明らかにしており、財務情報に限定されない広範なデータベースへの期待が高まっている。

Q2:最近の国際会計基準のわが国の対応はどうなるのでしょうか。

 会計基準の国際的な統一化へのわが国の対応
               
               2008年10月14日  (社)日本経済団体連合会


1.はじめに 〜会計基準の統一化を巡る各国の動向〜

 国境を越えた投資活動の活発化、企業のグローバルな事業活動・資金調達活動の広がりなどを背景に、金融・資本市場の利便性、効率性の向上に向けて、市場インフラの国際的な調和が重要性を増し、企業の財務情報のディスクロージャーの基礎となる会計基準についても国際的な統一化の動きが加速している。
 世界の三大市場のうち、欧州連合(EU)では域内の資本移動の自由化という大きな目標の下、2005年より連結財務諸表の域内統一基準として国際会計基準(IFRS: International Financial Reporting Standards )の適用を義務付け、今日では欧州各国市場において定着しつつある。
 一方、この間、日本ならびに米国では、他市場の会計基準の動向を踏まえながら、各々、自国の会計基準を見直し、国際的に収斂(コンバージェンス)させていく作業に取り組んできた。経団連としても、一貫して日本の会計基準と海外基準とのコンバージェンスを支持・推進している。わが国の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)による東京合意 #1 に基づくコンバージェンスへの取組みなど、関係者による精力的な取り組みの結果、当面の最重要課題であったEUによる日本基準の同等性評価 #2 についても正当な評価が下される見通しである。
 このような中、米国は、2007年11月、米国に上場する外国企業に対して、IFRSの使用を容認した。さらに、本年8月に、2009年から一部の米国国内企業に対してIFRSの適用を認め、2014年からは順次IFRS採用(アドプション)を義務付けていく考えを示唆した。
 既に、EU諸国をはじめカナダ、オーストラリア、インド、中国、韓国など、IFRSの採用を表明した国は100カ国を超えていたが、今回、米国がコンバージェンスからIFRSの採用へと方針を転換したことにより、IFRSが名実ともにグローバル・スタンダードとなる方向が揺ぎないものになりつつある。
 このように、世界において会計基準の流れは大きな転換期を迎えており、EUの同等性評価に一応の目途が付いた今日、わが国においても、IFRSの採用を含め、中長期的な視点から、今後のわが国会計基準に関する方針を明確にすべき時期にきている。そこで、本提言では、今後のわが国会計基準の方向性に関し、経済界の基本的考え方を示すこととする。
#1 IFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)と日本の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)が2007年8月に締結した合意。2011年6月末までにIFRSと日本基準に係る既存の差異を解消することとされている。
#2 EU市場では、日本企業が上場する際に日本会計基準の適用が容認されてきたが、2009年からは、IFRSかIFRSと同等以上の会計基準の適用を義務付けることとされており、日本基準がIFRSと同等か否かの評価作業が2008年末までに終了する予定である。

2.わが国会計基準の方向性を検討する上での視点

(1) 日本の金融・資本市場の国際競争力強化 わが国資本市場では、外国人投資家の持ち株比率が3割に迫り、更なる市場の活性化に向けて、海外からの一層の投資拡大が欠くことのできない要素となっている。国際的な激しい市場間競争のなかで、わが国資本市場の地位を高めていくことは、高齢化社会を迎えたわが国の個人金融資産を効率的に運用していくため、また、わが国企業の円滑な資金調達に向けた必須の課題である。
 今後とも、わが国の金融・資本市場への内外からの資金流入を促していくためには、国際的に整合性のある市場インフラを整備し、魅力的かつ信頼性のある市場にしていかなければならない。会計基準、ディスクロージャー制度は、最も基本的な市場インフラの一つであり、世界の流れを踏まえながら、わが国としても不断の見直しや国際的な参画を続けていくべきである。なお、市場活性化の観点からは、会計基準の整備のみならず、諸外国に比して株式投資の比率が未だ低いわが国の個人金融資産に関し、「貯蓄から投資へ」の流れを促進させるよう、金融証券税制なども併せて整備していくことが欠かせない。

(2) 企業のグローバル展開の基盤整備
 会計基準は、株主・投資家をはじめとするステークホルダーに対して企業の財政状態を正しく伝えるためのいわば「ものさし」であると同時に、企業を経営していく上での重要なツールでもある。
 いまや製造業の海外生産比率が平均で3割を超え、海外での資金調達も活発化するなど、わが国企業のグローバルな展開は一層拡大している。世界的な「ものさし」の統一は、財務諸表の比較可能性向上によって投資家の利便性を向上させ、多国間における企業の資金調達のコストを低減させるのみならず、企業経営のツールの共通化によって、グローバルな経営の効率化にも資する。
 グローバルな事業展開を行うわが国企業の海外子会社ではIFRSの採用が増加しつつあり、世界のグループ会社で、統一的に理解可能な会計基準を整備することは、グループ全体の連結決算や経営管理を行う上でも、日本企業のグローバル展開の基盤整備につながる。
 なお、市場に対するディスクロージャーの信頼性確保に係る社会的要請が高まるなか、内部統制報告制度や四半期報告制度の導入など、上場企業の財務報告に係るコストは上昇の一途を辿っている。会計基準の方向性を検討する上でも、コスト・ベネフィットに関する十分な配慮が必要である。

3.IFRS採用に向けたわが国の対応

(1) IFRSの採用を含むロードマップの作成
 米国がIFRSの採用に向けた方向性を示唆した今日、主要先進国の中で、IFRSの採用を正式に表明していない国は日本のみとなっている。既に、海外に上場する日本企業のなかには、IFRSの使用に向けた準備を開始する企業も増えつつある。日本も国際的な潮流を勘案しつつ、IFRSの採用を含む、今後のわが国会計基準の方向性に関する検討を加速し、具体的なロードマップを早急に作成すべきである。
 ロードマップには、米国SECと同様に、わが国がIFRSを採用する上で前提条件となる課題(例えば、IASBが進める中長期プロジェクトの議論の方向性の確認、適切なガバナンス確保、ASBJとのコンバージェンス作業の取り組み状況など)を予め示していくことが適当と考えられる。

(2) IFRS採用にあたっての経済界の考え
 IFRSの適用は、当面の間、IFRSと日本基準(現在、適用が認められている企業においては米国会計基準を含む)の選択制とすることが適当である。しかし、同一市場において複数の会計基準が長期間にわたり並存することは、投資家の利便性や市場の信頼性の観点から望ましいとは言えない。将来的には、基準の統一が必要と考えられるが、IFRSの義務付けを行う場合には、その適用時期については、最終決定を下した後、最低でも3年程度の準備期間が不可欠(早期適用可)となろう。人材育成、世界的なグループ決算処理の統一など、財務諸表作成者の準備期間に十分に配慮するとともに、今後の米国の動向なども踏まえつつ、国際的な発言権を低下させないよう判断を行っていくべきである。
 また、適用対象会社の範囲については、四半期報告書提出会社や内部統制報告制度の対象会社同様、金融商品取引法上の上場会社とすることが適当と考える。連結財務諸表を作成していない上場企業や上場企業以外の金融商品取引法対象会社については、IFRSの選択適用の容認やIFRSの影響額の注記などにより比較可能性を維持することが考えられる。
 IFRSは、投資・資金調達活動のグローバル化を背景とした、国際的な財務諸表の比較可能性の向上を主眼とする会計基準である。その目的を踏まえれば、諸外国で必ずしも開示が求められていない個別財務諸表にまでIFRSを適用する必要はなく、適用は連結財務諸表に限定すべきである。一方、上場企業の連結財務諸表作成実務の簡素化、効率化を図る観点から、個別財務諸表へIFRSを選択適用することも検討すべきである。

4.IFRSの採用に伴う個別財務諸表の取扱い

(1) 金融商品取引法上における開示の簡素化
 世界最大の資本市場を抱える米国においては、企業のディスクロージャーは連結財務諸表の開示のみで、個別財務諸表は開示されていないことに象徴されるように、投資家に対する証券市場でのディスクロージャーのグローバル・スタンダードは連結財務諸表である。
 わが国のディスクロージャー制度は、1999年から連結財務諸表中心となり、その際、個別財務諸表の効率化を図っていくこととされた。連結ベースのディスクロージャーへの移行から10年を経て、IFRSの採用を検討することを機に、資本市場において開示すべき財務諸表に関しても、国際的な整合性の観点を踏まえて見直すべきである。国際的な整合性が特に求められている金融商品取引法上の財務諸表開示は、可能な限り連結財務諸表に一本化し、個別財務諸表に関する開示は抜本的な簡素化を図っていくべきである。

(2) 連結会計基準のコンバージェンスと個別会計基準の整備
 約3900社の上場会社に対して、当面、IFRSと日本の連結会計基準の選択適用を認めた場合、市場における二つの基準の整合性を図る観点からも、日本の連結会計基準は、東京合意に基づく現在の計画に則ったコンバージェンス作業を継続していく必要がある。IFRSと日本の連結会計基準のコンバージェンスを進めることにより、将来、IFRSの義務付けを行う場合でも、その基準変更による影響を小さくすることが可能となる。
  一方、個別会計基準は、約250万社に及ぶ非上場会社や中小企業も適用する基準であり、法人税法上の課税所得計算や会社法上の分配可能額算定の基礎となる。これらに対し、一律に、IFRS並の国際的な水準を求めることは社会的コストの観点から非効率である。
 即ち、投資活動のグローバル化を背景として、より国際的な整合性が強く求められる連結会計基準(約3900社が対象)と、会社法、税法での目的が中心となる個別会計基準(約250万社が対象)の間では、差異が生ずること(連結会計基準を先行して国際化していくこと:連結先行論)は当然の流れといえる。
 IFRSを連結財務諸表の統一基準として採用した欧州においても、個別会計基準は、各国で異なる法人税法や会社法を考慮した調整が行われている。既に、現在のわが国のコンバージェンス作業においても、IFRSと国内法人税法との調整が困難となる例も見受けられ、個別会計基準は、その役割上求められる範囲内での見直しに留めるべきである。
 今後とも、わが国の個別会計基準においては、企業会計、会社法、法人税法が関連しつつ見直し作業が続けられていくと考えられる。各々の目的に合致した調整が可能となるよう、法人税法上では損金経理要件 #3 をより緩和して、申告調整の幅を広げていくこと、会社法では分配可能額算定の基礎として妥当か否かなどを適宜判断していくこと、などが必要となろう。
*3法人税の所得計算は、株主総会の承認を受けた個別財務諸表が基礎となる。決算に反映することが、法人税法上の費用(損金)として認める条件となっていることを損金経理要件と呼ぶ。

5.わが国における今後の課題

(1) 人材育成・教育
 現時点において、日本でIFRSを採用し、連結財務諸表を作成している企業は基本的に存在せず、いまだ、IFRSに係る十分な認識は深まっていない。今後、わが国がIFRSを自らの基準として採用するにあたっては、企業経営者を含めた財務諸表作成者、監査人、規制当局、財務諸表利用者のあらゆるレベルで、IFRSに対する理解を深めていくことが前提となる。人材面の裏付けの無いまま制度を導入すれば、資本市場への混乱を招き、かえってわが国市場や企業に対する信頼性、国際競争力の低下につながりかねない。今後のロードマップの作成にあたっては、官民挙げた人材育成・教育の方策を明確化すべきである。

(2) IFRS策定への本格的な参画・貢献
 IFRSの採用にあたっては、これを海外の設定機関が作成した基準として受け入れるのではなく、自らの基準として、基準開発段階から主体的な関与を深めていくことが不可欠となる。例えば、国際会計基準審議会(IASB)に対する意見発信は、ディスカッションペーパーが作成される時点など、可能な限り早い段階から行うことが必要である。また、人的なつながりを強化するとともに、各国の基準設定主体とも連携しながら、意見を発信していくことも必要である。さらに、行政、産業界、基準設定主体など様々なレベルにおいて長期的な関係を構築するなど、わが国全体として自らの基準開発という位置付けでこれまで以上に積極的に貢献していくための体制作りが急務である。

(3) 企業会計基準委員会(ASBJ)の機能強化
 会計基準を取巻く国際的な流れが加速する中で、会計基準に関するわが国の知の集約機関として、ASBJの役割は益々大きくなる。今後とも、会計基準に関するわが国各界の意見を取りまとめの上、コンバージェンスの推進に向けて、国を代表して意見発信する最も重要な機関であり、IFRSの採用・普及にあたって、その機能をさらに充実させていくべきである。
 対外的には、IASBの最重要パートナーとしての関係を強化し、常に最先端の動向を把握するとともに、IASBの進めるプロジェクトに積極的に人材を派遣すること、諸外国の会計基準設定主体との連携をより深めていくこと、わが国各界の意見を取りまとめた上で、これを意見発信していく機能の強化が求められる。将来的にIASBボードメンバーやスタッフとして活躍できる人材の育成や、日本のみならず、アジアにおけるIASB活動の拠点としての役割も期待される。
 さらに、英文で、かつ原則ベースとされるIFRSを日本国内で採用する際には実務上の課題も多い。ASBJにおいて、IASBとの共同作業として、英文IFRSを理解が容易な日本語へと翻訳する作業を行うとともに、基準の解釈による混乱が生じないよう背景の説明などを含めた普及、理解促進、人材の育成などの役割を担うことも重要である。なお、これらの役割を担うためには、安定的な財政基盤の構築や適切なガバナンスの確保が欠かせない。

6.今後の国際会計基準審議会(IASB)の活動についての期待

(1) 適切なガバナンスの確保
 今や世界各国で使用されるIFRSの開発を担うIASBには、多くの国々の市場関係者の意見を基礎とした、公平、中立な観点から判断を行う重責が求められている。デュープロセスの遵守、経済界をはじめとする各界意見の偏りのない尊重、市場や産業に与える影響の慎重な評価、国際的な意見調整機能、判断に対する十分な説明責任などが強く求められる。
 これまでのIASBの活動においては、会計基準の世界的な統一という理想を追うがあまり、実務上の実行可能性や投資家・経営者の理解容易性、各国法制との整合性などに疑問が生ずるようなプロジェクト遂行も散見された。真のグローバルスタンダードセッターとして、会計基準は机上ではなく、市場のニーズで生まれるという原点に立ち戻った活動が求められる。特に中長期プロジェクト項目(財務諸表の表示、退職後給付など)には、現行の会計概念を大きく変更する可能性を含むものも多く、日本としても、IFRS採用の検討にあたり、その動向を注視する必要がある。
 また、会計基準は各国の法令の一部としても位置付けられることから、独立性を保ちつつも、現在検討されているモニタリング組織の設立やIASCF評議員による監視機能の強化が必要である。

(2) 長期運営に耐えうる運営方法への見直し
 IASBは民間団体であり、その運営は世界各国からの拠出によって成り立っている。IASBの活動は今後とも拡大が予想されることから、まず、国際的な機関に相応しい効率的な組織運営の実施とその監視機能を強化する必要がある。同時に、安定した運営を支えるために、長期的に持続可能な資金調達方法を確立する必要がある。
 現在、日本からは限られた市場関係者の寄附によって、IASBの運営資金全体の十数パーセントが賄われている。今後、わが国上場企業の全てに対して、連結財務諸表におけるIFRSの適用が考えられることから、資金面においても、一部の関係者に偏った寄附方式ではなく、より広く、強制力を持つ調達方法の確立が求められる。
 会計基準を巡る世界の流れは急である。サブプライム・ローン問題に端を発し、世界同時株安が進むなど金融・資本市場に対する信頼性が大きく揺らぐなか、会計基準やディスクロージャー制度の重要性は一層増すものと考えられる。
 金融危機に対する各国の対応なども十分に踏まえ、わが国市場と企業の国際競争力の強化に資する会計・開示制度の再構築を図るべきで

2:会社法と会計処理
Q1:会社法では繰延資産はどのように規定していますか。
A1:
1.会社法施行に伴う繰り延べ資産の取り扱い

 旧商法(商法施行規則)では、繰延資産として、図表1(繰延資産の分類)の左側に掲げる項目が認められていましたが、平成18年5月1日に施行された会社法では繰延資産の計上に関する具体的な規定を削除して、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」は繰入資産に属するものとし、繰延資産の計上の適否については、企業会計の基準その他の一般に公正妥当と認められる慣行に委ねられました。
 これを受けて、企業会計基準委員会は平成18年6月6日に「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い(実務対応報告公開草案第23号)」の公表を行いました。

【本公開草案の概要】
 これまで行われてきた繰延資産の会計処理を踏まえ、以下の考え方に基づき、必要な範囲内で見直しが行なわれています。

(1)繰延資産の考え方については、企業会計原則注解に示されている考え方(すでに代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用)を踏襲することとします。
(2)「繰延資産の部に計上した額」は剰余金の分配可能額から控除されることなども考慮し、検討対象とする繰延資産の項目は、原則として旧商法施行規則で限定列挙されていた項目(ただし、会社法において廃止された建設利息を除く)とします。
  この結果、公開草案では、図1(繰延資産の分類)の右側の5 項目を繰延資産として取り扱い、その会計処理について定めています。


@ 株式交付費
 株式交付費とは、会社設立後、新たに株式を発行するために支出した額をいいます。具体的には、新株募集のための広告費、金融機関などの取扱手数料、株式申込証、目論見書、株券などの印刷費、設定登記の登録免許税などが含まれます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、企業規模の拡大のために行う資金調達などの財務活動に係る株式交付費については、繰延資産に計上することができ、この時には株式交付の時から3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法により償却するものとします。

A 社債発行費等(新株予約権発行費を含む)
 社債発行費とは、社債を発行するために要した費用をいいます。具体的には社債募集のための広告費、金融機関などの取扱手数料、社債申込証、目論見書、社債券などの印刷費、社債の登記の登録免許税などが含まれます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理することとしています。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には社債の償還までの期間にわたり(原則として)利息法により償却します。新株予約権の発行に係る費用についても、資金調達などの財務活動に係るものについては、繰延資産に計上することができ、この時には3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法により償却するものとします。

B 創立費
 創立費は、会社の設立に必要な支出です。具体的には定款および諸規定の作成費用、株式申込証、目論見書(有価証券の募集や売り出しのために一般投資家に提供する、会社事業について説明した資料)・株券などの印刷費用、創立事務所の賃借料、設立事務に使用する使用人の手当・給料、株式募集費、創立総会の費用等が含まれます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には会社の成立の時から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却するものとします。

C 開業費
 開業費とは、会社設立の後、開業準備のために支払われる費用をいいます。具体的には、土地・建物などの賃借料、広告宣伝費、通信費、支払利息、光熱費、使用人の給料・手当などで、会社設立後営業開始までに支出された額をいいます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には開業の時から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却するものとします。

D 開発費
 開発費とは、新技術または新経営組織の採用、新資源の開発、市場開拓、生産能率向上などのために特別に支出した金額を言います。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には支出の時または支出した事業年度から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却するものとします。

【適用時期】
 本実務対応報告公表日以後に終了する事業年度及び中間会計期間から本実務対応報告を適用するものとします。ただし、会社法施行日(平成18年5月1日)以後本実務対応報告公表日前に終了した事業年度及び中間会計期間から本実務対応報告を適用することができます。

               図表1:繰延資産
        (旧)                (新)
1.創立費 1.株式交付費
2.開業費 2.社債発行費等
3.開発費 3.創立費
4.試験研究費 4.開業費
5.新株発行費 5.開発費
6.社債発行費
7.社債発行差金
Q2:会社法では利益処分の考え方に代わって、剰余金の分配という考え方が採り入れられましたが、どのような仕組みですか。
A2:
(1)剰余金の分配
 

 「剰余金の分配」とは、会社法446条の規定により算出される剰余金を原資として、株主への配当(旧商法における「利益配当」、「中間配当」および「資本・準備金の減少に伴う払い戻し」に相当します。)や自己株式の有償取得を行うことをいいます。
「剰余金の分配」のうち株主への配当については、資本・準備金の減少に伴う払い戻しの場合を除き、従来、事業年度が年一回の株式会社においては、多くても利益配当及び中間配当の年二回しか認められていませんでしたが、会社法の施行によりこの配当の回数制限は廃止されました。この結果、剰余金の分配はそのすべての場合において、期中いつでも、また何回でも、株主総会の普通決議(ただし、現物配当の場合は特別決議が必要。)によって行うことができるようになっています。一定の要件を満たす場合には、取締役会の決議だけで分配することも可能です。その分配に係る額については、配当等の効力発生日における「分配可能額(461条)」を超えてはならないものとされ、剰余金の分配に対して統一的に財源規制が課せられています。ただし、合併、会社分割等に伴う自己株式取得など一定の場合は、この財源規制の対象とはなりません。
配当等の原資となる剰余金の額は、最終事業年度の末日(決算日)における剰余金の額に、最終事業年度の末日後(期中)の剰余金の変動を反映させた額となり、具体的には次のようになります。
≪剰余金の額≫ =「@〜Cの合計額」−「D〜Fの合計額」
@ 最終事業年度の末日における
  ( 資産の額 + 自己株式の帳簿価額の合計額 ) −
( 負債の額 + 資本金及び準備金の額 + 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 )
  A 最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合の処分損益額
B 最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額
C 最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額
D 最終事業年度の末日後に自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額
E 最終事業年度の末日後に剰余金の配当等をした場合におけるその合計額
F 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

 @、Fの「法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額」は、それぞれ会社計算規則177条、178条に規定がおかれています。
 なお、建設利息の配当は、必要に応じて資本を減少させることで配当の原資とする剰余金を生じさせることができる等の理由で、会社法施行に伴って廃止されています。


(2)分配可能額の計算

 分配可能額は(1)で説明した剰余金の額を基礎として算出します。分配可能額は旧商法でいう「配当可能利益」に相当するものですが、「配当可能利益」の場合と異なり、分配可能額の計算においては分配可能額の算定にあたっての基準時が決算期ではなく分配時(効力発生日)となっています。
計算式は次のようになります。
 ≪分配可能額≫ = 「@〜Aの合計額」−「B〜Eの合計額」
@ 剰余金の額 (剰余金分配の効力発生日における剰余金の額です。)
A 臨時計算書類につき株主総会又は取締役会の承認を受けた場合における、次に掲げる額
イ 臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ イの期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
  B 自己株式の帳簿価額 (剰余金分配の効力発生日における帳簿価額です。)
  C 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
  D Aの場合における期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
  E B〜Dのほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 (会社計算規則186条)
臨時計算書類というのは、臨時決算日における貸借対照表と、臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書のことを指しています。株主総会又は取締役会の承認を受けることで、臨時決算日までの期間損益をこの分配可能額に反映させることができます。
Eの「法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額」については会社計算規則186条に詳細な規定がありますが、186条1号において、のれん等調整額(資産の部に計上したのれんの額を二で除して得た額及び繰延資産の部に計上した額の合計額)が資本金及び準備金の合計額を超えている場合に、ある一定の額(この額は、その超過額がその他資本剰余金の額以下であるかどうかに応じて個別に算定されます。)を分配可能額から控除しています。これは、企業結合に関する会計基準が適用されるのに伴い、多額ののれんが計上されるケースが想定されることから、その一定額を会社内部に拘束しようとする趣旨のものです。

(3)決算時における繰越利益剰余金の会計処理

 今日の企業は、1年という会計期間を設けて、期間ごとに当期純利益金額を計算しています。この当期純利益金額は、期中に行われる剰余金の配当などとともに、貸借対照表「純資産の部」内の「その他利益剰余金」の内訳項目である「繰越利益剰余金(旧商法でいう未処分利益に相当します。)」の変動要因の一つとなります。
具体的な処理は次のようになります。
当期純利益金額は、個人企業であれば直ちに資本金勘定に振り替えられますが、株式会社では、まず繰越利益剰余金勘定に振り替えられ、帳簿決算直前の繰越利益剰余金残高と合計されます。そして、それらの合計額が繰越利益剰余金期末残高とされ、株主資本等変動計算書における期末残高として記載されることになります。
帳簿決算直前の繰越利益剰余金残高は、最終事業年度の末日(期末日)における繰越利益剰余金残高に、使途特定の積立金の目的に従う取崩し額等を加算し、また、期中における剰余金の分配額やこれに伴う利益準備金の積立額、自己株式の有償取得による減少額等を控除して計算します。
旧商法においては、決算において確定した繰越利益剰余金(旧商法でいう当期未処分利益)の額に基づいて配当等の利益処分がなされていましたが、会社法では、剰余金の配当や自己株式の取得は分配時(配当等の効力発生日)における剰余金の額に基づいて行うこととされており、決算による確定手続と剰余金の配当等との関係は直接的なものではなくなりました。


(4)株主資本等変動計算書

 株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の部の各項目のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の計数の増減を表す独立した書類であり、会計監査の対象となる計算書類に含まれます。この株主資本等変動計算書には、剰余金の配当、剰余金の減少による資本金・準備金の増加、自己株式の消却に伴う剰余金の減少、任意積立金の積立て及び取崩し、損失の処理など、純資産の部の各項目の計数の増減を伴う取引がすべて記載されることになります。
株主資本等変動計算書には、貸借対照表の純資産の部の表示区分に従って、各項目の変動額を記載していきます。株主資本の各項目(資本金、資本剰余金、利益剰余金及び自己株式に係る項目)については、前期末残高、当期変動額及び当期末残高に区分し、かつ、当期変動額を各変動事由ごとに表示する必要があります。株主資本以外の各項目については、特に変動事由を明らかにすることを要せず、単に純額を表示すればよいものとされています。会社法施行に伴い損益計算書おける前期繰越利益以下の記載がなくなったことから、純利益(損失)の計上、増資、配当などによる純資産の部の各項目の変動を明確にする株主資本等変動計算書は、いわば貸借対照表と損益計算書の橋渡しの役割りを担うものとなっています。
Q3:会社法によって従来の資本の部はどのように変わったのですか。
A3: 従来の「資本の部」は会社法では、「純資産の部」に資本の範囲が大きく変わりました。

T 株主資本
  1. 資本金        
  2. 資本剰余金      
   (1)資本準備金
   (2)その他資本剰余金
  3. 利益剰余金
   (1)利益準備金
   (2)その他利益剰余金
      任意積立金
      繰越利益剰余金
U 評価・換算差額等
V 新株予約権
      純資産の部合計

この結果、従来の商法では、
  株主資本 = 自己資本 = 純資産
でしたが、会社法においては、
  株主資本 > 自己資本 > 純資産
というような関係になっています。

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