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Q&A
1:会社法と会計処理
Q1:会社法では繰延資産はどのように規定していますか。
A1:
1.会社法施行に伴う繰り延べ資産の取り扱い

 旧商法(商法施行規則)では、繰延資産として、図表1(繰延資産の分類)の左側に掲げる項目が認められていましたが、平成18年5月1日に施行された会社法では繰延資産の計上に関する具体的な規定を削除して、「繰延資産として計上することが適当であると認められるもの」は繰入資産に属するものとし、繰延資産の計上の適否については、企業会計の基準その他の一般に公正妥当と認められる慣行に委ねられました。
 これを受けて、企業会計基準委員会は平成18年6月6日に「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い(実務対応報告公開草案第23号)」の公表を行いました。

【本公開草案の概要】
 これまで行われてきた繰延資産の会計処理を踏まえ、以下の考え方に基づき、必要な範囲内で見直しが行なわれています。

(1)繰延資産の考え方については、企業会計原則注解に示されている考え方(すでに代価の支払が完了し又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用)を踏襲することとします。
(2)「繰延資産の部に計上した額」は剰余金の分配可能額から控除されることなども考慮し、検討対象とする繰延資産の項目は、原則として旧商法施行規則で限定列挙されていた項目(ただし、会社法において廃止された建設利息を除く)とします。
  この結果、公開草案では、図1(繰延資産の分類)の右側の5 項目を繰延資産として取り扱い、その会計処理について定めています。


@ 株式交付費
 株式交付費とは、会社設立後、新たに株式を発行するために支出した額をいいます。具体的には、新株募集のための広告費、金融機関などの取扱手数料、株式申込証、目論見書、株券などの印刷費、設定登記の登録免許税などが含まれます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、企業規模の拡大のために行う資金調達などの財務活動に係る株式交付費については、繰延資産に計上することができ、この時には株式交付の時から3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法により償却するものとします。

A 社債発行費等(新株予約権発行費を含む)
 社債発行費とは、社債を発行するために要した費用をいいます。具体的には社債募集のための広告費、金融機関などの取扱手数料、社債申込証、目論見書、社債券などの印刷費、社債の登記の登録免許税などが含まれます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理することとしています。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には社債の償還までの期間にわたり(原則として)利息法により償却します。新株予約権の発行に係る費用についても、資金調達などの財務活動に係るものについては、繰延資産に計上することができ、この時には3年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法により償却するものとします。

B 創立費
 創立費は、会社の設立に必要な支出です。具体的には定款および諸規定の作成費用、株式申込証、目論見書(有価証券の募集や売り出しのために一般投資家に提供する、会社事業について説明した資料)・株券などの印刷費用、創立事務所の賃借料、設立事務に使用する使用人の手当・給料、株式募集費、創立総会の費用等が含まれます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には会社の成立の時から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却するものとします。

C 開業費
 開業費とは、会社設立の後、開業準備のために支払われる費用をいいます。具体的には、土地・建物などの賃借料、広告宣伝費、通信費、支払利息、光熱費、使用人の給料・手当などで、会社設立後営業開始までに支出された額をいいます。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には開業の時から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却するものとします。

D 開発費
 開発費とは、新技術または新経営組織の採用、新資源の開発、市場開拓、生産能率向上などのために特別に支出した金額を言います。これらに要した費用は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理します。ただし、繰延資産に計上することができ、この時には支出の時または支出した事業年度から5年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却するものとします。

【適用時期】
 本実務対応報告公表日以後に終了する事業年度及び中間会計期間から本実務対応報告を適用するものとします。ただし、会社法施行日(平成18年5月1日)以後本実務対応報告公表日前に終了した事業年度及び中間会計期間から本実務対応報告を適用することができます。

               図表1:繰延資産
        (旧)                (新)
1.創立費 1.株式交付費
2.開業費 2.社債発行費等
3.開発費 3.創立費
4.試験研究費 4.開業費
5.新株発行費 5.開発費
6.社債発行費
7.社債発行差金
Q2:会社法では利益処分の考え方に代わって、剰余金の分配という考え方が採り入れられましたが、どのような仕組みですか。
A2:
(1)剰余金の分配
 

 「剰余金の分配」とは、会社法446条の規定により算出される剰余金を原資として、株主への配当(旧商法における「利益配当」、「中間配当」および「資本・準備金の減少に伴う払い戻し」に相当します。)や自己株式の有償取得を行うことをいいます。
「剰余金の分配」のうち株主への配当については、資本・準備金の減少に伴う払い戻しの場合を除き、従来、事業年度が年一回の株式会社においては、多くても利益配当及び中間配当の年二回しか認められていませんでしたが、会社法の施行によりこの配当の回数制限は廃止されました。この結果、剰余金の分配はそのすべての場合において、期中いつでも、また何回でも、株主総会の普通決議(ただし、現物配当の場合は特別決議が必要。)によって行うことができるようになっています。一定の要件を満たす場合には、取締役会の決議だけで分配することも可能です。その分配に係る額については、配当等の効力発生日における「分配可能額(461条)」を超えてはならないものとされ、剰余金の分配に対して統一的に財源規制が課せられています。ただし、合併、会社分割等に伴う自己株式取得など一定の場合は、この財源規制の対象とはなりません。
配当等の原資となる剰余金の額は、最終事業年度の末日(決算日)における剰余金の額に、最終事業年度の末日後(期中)の剰余金の変動を反映させた額となり、具体的には次のようになります。
≪剰余金の額≫ =「@〜Cの合計額」−「D〜Fの合計額」
@ 最終事業年度の末日における
  ( 資産の額 + 自己株式の帳簿価額の合計額 ) −
( 負債の額 + 資本金及び準備金の額 + 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 )
  A 最終事業年度の末日後に自己株式の処分をした場合の処分損益額
B 最終事業年度の末日後に資本金の額の減少をした場合における当該減少額
C 最終事業年度の末日後に準備金の額の減少をした場合における当該減少額
D 最終事業年度の末日後に自己株式の消却をした場合における当該自己株式の帳簿価額
E 最終事業年度の末日後に剰余金の配当等をした場合におけるその合計額
F 法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額

 @、Fの「法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額」は、それぞれ会社計算規則177条、178条に規定がおかれています。
 なお、建設利息の配当は、必要に応じて資本を減少させることで配当の原資とする剰余金を生じさせることができる等の理由で、会社法施行に伴って廃止されています。


(2)分配可能額の計算

 分配可能額は(1)で説明した剰余金の額を基礎として算出します。分配可能額は旧商法でいう「配当可能利益」に相当するものですが、「配当可能利益」の場合と異なり、分配可能額の計算においては分配可能額の算定にあたっての基準時が決算期ではなく分配時(効力発生日)となっています。
計算式は次のようになります。
 ≪分配可能額≫ = 「@〜Aの合計額」−「B〜Eの合計額」
@ 剰余金の額 (剰余金分配の効力発生日における剰余金の額です。)
A 臨時計算書類につき株主総会又は取締役会の承認を受けた場合における、次に掲げる額
イ 臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間の利益の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
ロ イの期間内に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
  B 自己株式の帳簿価額 (剰余金分配の効力発生日における帳簿価額です。)
  C 最終事業年度の末日後に自己株式を処分した場合における当該自己株式の対価の額
  D Aの場合における期間の損失の額として法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額
  E B〜Dのほか、法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額 (会社計算規則186条)
臨時計算書類というのは、臨時決算日における貸借対照表と、臨時決算日の属する事業年度の初日から臨時決算日までの期間に係る損益計算書のことを指しています。株主総会又は取締役会の承認を受けることで、臨時決算日までの期間損益をこの分配可能額に反映させることができます。
Eの「法務省令で定める各勘定科目に計上した額の合計額」については会社計算規則186条に詳細な規定がありますが、186条1号において、のれん等調整額(資産の部に計上したのれんの額を二で除して得た額及び繰延資産の部に計上した額の合計額)が資本金及び準備金の合計額を超えている場合に、ある一定の額(この額は、その超過額がその他資本剰余金の額以下であるかどうかに応じて個別に算定されます。)を分配可能額から控除しています。これは、企業結合に関する会計基準が適用されるのに伴い、多額ののれんが計上されるケースが想定されることから、その一定額を会社内部に拘束しようとする趣旨のものです。

(3)決算時における繰越利益剰余金の会計処理

 今日の企業は、1年という会計期間を設けて、期間ごとに当期純利益金額を計算しています。この当期純利益金額は、期中に行われる剰余金の配当などとともに、貸借対照表「純資産の部」内の「その他利益剰余金」の内訳項目である「繰越利益剰余金(旧商法でいう未処分利益に相当します。)」の変動要因の一つとなります。
具体的な処理は次のようになります。
当期純利益金額は、個人企業であれば直ちに資本金勘定に振り替えられますが、株式会社では、まず繰越利益剰余金勘定に振り替えられ、帳簿決算直前の繰越利益剰余金残高と合計されます。そして、それらの合計額が繰越利益剰余金期末残高とされ、株主資本等変動計算書における期末残高として記載されることになります。
帳簿決算直前の繰越利益剰余金残高は、最終事業年度の末日(期末日)における繰越利益剰余金残高に、使途特定の積立金の目的に従う取崩し額等を加算し、また、期中における剰余金の分配額やこれに伴う利益準備金の積立額、自己株式の有償取得による減少額等を控除して計算します。
旧商法においては、決算において確定した繰越利益剰余金(旧商法でいう当期未処分利益)の額に基づいて配当等の利益処分がなされていましたが、会社法では、剰余金の配当や自己株式の取得は分配時(配当等の効力発生日)における剰余金の額に基づいて行うこととされており、決算による確定手続と剰余金の配当等との関係は直接的なものではなくなりました。


(4)株主資本等変動計算書

 株主資本等変動計算書とは、貸借対照表の純資産の部の各項目のうち、主として、株主に帰属する部分である株主資本の各項目の計数の増減を表す独立した書類であり、会計監査の対象となる計算書類に含まれます。この株主資本等変動計算書には、剰余金の配当、剰余金の減少による資本金・準備金の増加、自己株式の消却に伴う剰余金の減少、任意積立金の積立て及び取崩し、損失の処理など、純資産の部の各項目の計数の増減を伴う取引がすべて記載されることになります。
株主資本等変動計算書には、貸借対照表の純資産の部の表示区分に従って、各項目の変動額を記載していきます。株主資本の各項目(資本金、資本剰余金、利益剰余金及び自己株式に係る項目)については、前期末残高、当期変動額及び当期末残高に区分し、かつ、当期変動額を各変動事由ごとに表示する必要があります。株主資本以外の各項目については、特に変動事由を明らかにすることを要せず、単に純額を表示すればよいものとされています。会社法施行に伴い損益計算書おける前期繰越利益以下の記載がなくなったことから、純利益(損失)の計上、増資、配当などによる純資産の部の各項目の変動を明確にする株主資本等変動計算書は、いわば貸借対照表と損益計算書の橋渡しの役割りを担うものとなっています。
Q3:会社法によって従来の資本の部はどのように変わったのですか。
A3: 従来の「資本の部」は会社法では、「純資産の部」に資本の範囲が大きく変わりました。

T 株主資本
  1. 資本金        
  2. 資本剰余金      
   (1)資本準備金
   (2)その他資本剰余金
  3. 利益剰余金
   (1)利益準備金
   (2)その他利益剰余金
      任意積立金
      繰越利益剰余金
U 評価・換算差額等
V 新株予約権
      純資産の部合計

この結果、従来の商法では、
  株主資本 = 自己資本 = 純資産
でしたが、会社法においては、
  株主資本 > 自己資本 > 純資産
というような関係になっています。

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